CALF―若手映像作家たちの挑戦

若手の映像作家たちが自らの手で作品を国内外に発信していこうと、新しいレーベル「CALF」を立ち上げた。アニメーション作家の大山慶さん、水江未来さん、和田淳さん、そして評論家の土居伸彰さんらが中心メンバーだ。この3人のアーティストといえば、今海外でもっとも注目されている日本の新進作家といっても過言ではない。アニメーション映画祭だけでなく、カンヌ、ベネチア、ロカルノといった国際映画祭でも作品が紹介され、今年は3人揃ってザグレブ、アヌシー、広島、そしてオタワと世界四大アニメーション映画祭への出品を果たした。

真夏の太陽のもと国際アニメーション・フェスティバルが開催されていた広島で、この「CALF」設立を記念するイベントが行われた。会場はレトロな雰囲気あふれる映画館サロンシネマ。評判のゆったりとしたシートは補助席まで一杯に埋まった。上映後のトークで、設立メンバーは、なぜ彼らは自分たちのレーベルを立ち上げようと思ったのか、その経緯を語った。


「海外の映画祭で作品を上映される人は、売れているんだと思っていた。」と大山さん。自分が国際映画祭に参加するようになり厳しい現実を知った。どうやってアニメーションで食べていけるか。声をかけてくれた会社もあったが、ラインナップが多すぎるのを見て、初めだけ売ったら後は放っておかれるのでは、と不安になったと言う。1000枚くらいのセールスなら赤字を出さずに自分たちで出来るのではないか、とも思った。「販売会社との交渉では、納得のいく条件を取り付けるのがなかなか難しいということもある。」と指摘するのは評論家の土居さん。和田淳さんの場合は、DVDの販売会社からオファーを受けたが、発売前に会社の方針が変わり頓挫してしまった。「どっちみち大量には売れないなら、このメンバーでどれだけ自由にできるか試してみよう。」と、仲間の誘いにのることにした。

一方、一緒にタッグを組むことで別の可能性も広がった。「とにかく海外に出そうと200近くの映画祭にエントリーをしまくった。」という水江さん。一緒にアヌシーに参加した大山さんは、数多くの出品をした水江さんは海外での知名度が違うと感じたという。さらに、3人の作品をパッケージで提案するようになってアピールがしやすくなり、海外の映画祭に上映の機会が広がった。国内のDVD販売や上映会だけでなく、海外への発信にも手ごたえを得たようだ。

トークの締めくくりに、大山さんが「自分たちだけの閉鎖的なグループにしないように、これから他のインディーズのアーティストやミュージシャンなどとのコラボレーションの可能性も探っていきたい。」と抱負を語った。
自ら「CALF(子牛、幼獣、愚かで不器用な若者の意)」と銘打ち、とりあえず彼らは発進することにした。前途は多難かもしれないが、アニメーション作家だけでなく、多くの映像作家たちに一つのヒントを与えてくれる貴重な試みになるのではないか。ぜひゆるく楽しく続けて欲しい。


PIKAPIKAワークショップin広島
この夏にCALFからDVDを発売する映像ユニット、トーチカが登場し、光で描くアニメーションを体験するpikapikaワークショップで会場はおおいに盛り上がった。

動画はこちらから
http://tochka.jp/pikapika/2010/08/calf_hiroshima_pika_pika_works.html

(文・写真 Y.K.)