インタビュー:大山慶

広島国際アニメーション・フェスティバルで優秀賞を受賞された大山慶さん(アニメーション作家)にインタビューすることができました。

大山慶(おおやま・けい)
イメージフォーラム付属映像研究所卒業。東京造形大学卒業。東京造形大学大学院修士課程修了。日本アニメーション協会会員。
http://www.keioyama.com/

JAPIC(以下J):この度は優秀賞受賞おめでとうございます。日本人で受賞したのは大山さん一人でしたね。

大山慶(以下O):ありがとうございます。コンペインしただけでも喜んでいたので、受賞は本当に嬉しかったです。

J:大山さんは今年は海外でも数多く映画祭に招待されましたね。

O:アヌシー、ザグレブ、オーバーハウゼン(入賞)と行ってきました。このあとオタワにも招待されています。広島は日本で一番大きなアニメーション映画祭で、お世話になった方々もたくさん会場にいらっしゃるので、いつも以上に緊張しました。と、同時に、やっとここまで来たんだなという実感がありました。

J:海外の映画祭の雰囲気は日本とは違いますか?

O:海外、というよりも映画祭ごとに雰囲気が違います。アヌシーはすごく規模が大きくて、誰が作家で誰が評論家で誰が観客なのか区別もつかないような状態でした。ザグレブやオーバーハウゼンはアットホームで、作家同士の交流も出来、セレクションも良かったので落ち着いて作品の鑑賞に集中できました。町中で観客の方にもたくさん声をかけていただきました。
また、同じ作品でも映画祭によって観客の反応が違うところが面白いです。笑う場所とか、タイミングとか、拒否反応とか。でも、言葉を介在させなくても絵と音で感覚が伝わった時は凄くうれしいですね。


「HAND SOAP」

J:広島ではコンペティションの作家と交流はありましたか?

O:ええ、英語は苦手なのですが作家の方と交流できました。なかでも、エストニアのプリート・パルンさんに自分の作品をほめていただいたのがすごく嬉しかったです。『HAND SOAP』は日本人にしか正確には伝わらないようなディテールがたくさんあるので心配していたのですが、むしろ日本人より深く作品を理解してもらえていて感激でした。

J:国内の方の反応はいかがでしたが?

O:自分の作品は気持ち悪いシーンもあるので、万人に好意的には受け取られないとは思っていますが、中には熱心に話していただいたり、サインをせがまれたり…。

J:サインですか!?

O:そうですよ! 学生の方ですとか。

J:広島国際アニメーション・フェスティバルには全国から学生の方がいらっしゃってますね。大山さんは目標の一人でしょうか。

O:山村浩二さんたちの世代の次に、いきなり僕ら30代近辺の世代が固まっているという感じなのかな。今回は、世代の近い和田淳さんや水江未来さんらとCALFというレーベルをつくり、たまたまなのですがこのメンバーがアヌシー、ザグレブ、広島、オタワと4大アニメーション映画祭に参加することができました。こんな事はもうないかも知れないので、オタワでもしっかりCALFをアピールしてこようと思います。そんなこともあり、目標になっているかはわかりませんが、注目をしていただいているのは感じますね。

J:さて、大山さんは来月からレジデンスでバンクーバーに一年間滞在されるそうですが、その経緯と予定をお聞かせください。

O:短編アニメーションは商品として流通させにくいこともあり、文化として根付いているとは言い難い状況にあります。それでも世界中で映画祭は開催されていて、世界規模で考えればそのファンも決して少なくはないと思うんです。なので、世界に目を向け、国際的に動いていかなければならないとはずっと思っていました。
そんな時、文化庁の新進芸術家海外研修制度の存在を知り、応募してみようと考えたわけです。
予定としては、とにかく作品制作に没頭することと、もう一つは、カナダの良質な作品をたくさん見て、向こうの作家と交流を持ちたいですね。カナダは短編アニメーションの先進国といえる国なので。日本の作家をカナダに紹介する機会を作り、逆に日本に帰ったときにはカナダで出会った作品を日本に紹介できたらなと思います。もちろん、滞在中に作った新作も良い形で発表したいですね。

J:本日はありがとうございました。

広島国際アニメーションフェスティバル
http://hiroanim.org/

イメージフォーラム映像研究所
http://www.imageforum.co.jp/school/

文化庁 新進芸術家海外研修制度
http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/geijutsuka_yousei/h22_shinshin.html